言い過ぎ名探偵の受難


●キャスト


荒 調太(あら しらべた)

33歳。職業は脱出ゲームのイベンター。機械の体。

今は穏やかな良きパパだが、昔は傲慢不遜な凄腕探偵だった。



荒 亜留江(あら あるえ)

38歳。調太の妻。お優しいママ。



荒 ミタ(あら みた)

17歳。調太と亜留江の娘。頭脳明晰で父親譲りの推理力をもつ。

いよいよ高校生探偵としてデビュー。



迂闊刑事(うかつ けいじ)

42歳。調太のパートナー。ヘボ刑事で調太の引き立て役。

迂闊にも、すぐ人様に向かって銃口を向ける



新田 団(しんだ だん)

亜留江に殺された人。死人に口なし



男性1

調太に呼び出された一人。



女性1

調太に呼び出された一人。



女性2

調太に呼び出された一人。



【ミタナレ】

「チェック! 私、高校生探偵の荒 ミタ(あら みた)

 今日から明晰過ぎる頭脳を使って

 悪い奴を捕まえる名探偵になるの。チェック!」


【ミタ】

「パパ」


【調太】

「おお、どうしたんだい?」


【ミタナレ】

「目視! 私の声に反応したのは、パパ、荒 調太(あら しらべた)

 パパも昔は名探偵って呼ばれる凄い人だったんだよ、目視!」


【ミタ】

「紆余曲折あったけど、いよいよ私、今日から名探偵です」


【調太】

「ああっ、そうか。ミタも探偵になったのか。おめでとう。

 少し前までは子供だったのに……時が経つのは早いものだね」


【ミタ】

「私が名探偵になった瞬間からそれは

 もう行く先々で殺人事件は起きると思うの」


【調太】

「そうだね。僕が現役の時もそんな感じだった。名探偵あるところに 殺人事件有り、それは呪いでもあり宿命でもある」


【ミタ】

「明日から友達8人でスノーボードに行くんだけど、

 絶対、誰か死ぬと思うの」


【調太】

「うんうん。死ぬね」


【ミタ】

「だから私が明日、殺人事件を解く前にね」


【ミタ】

「どうしてパパが探偵を辞め機械の体を手に入れたのか……

 その謎に迫りたいと思うの」


【調太】

「なるほどだね。確かに今の僕は人造人間みたいな体だ。

 気になるよね?」


【ミタ】

「気になるよ~。私、パパのせいで小学生の頃、

 『や~いドクターゲロの子供~』っていじめられたんだから」


【調太】

「ごめんね」


【ミタ】

「いいのいいの、その子達には社会的制裁を加えたから。

 さっ、話して。どうして名探偵と呼ばれたパパが

 探偵を引退し機械の体を手に入れたのか」


【調太】

「分かった、分かった。じゃあ話してあげよう」


【ミタ】

「わーい」


【調太】

「あれは私が高校生の時……」


【調太】

「名探偵としてピークだった頃……」


(回想へ)


【調太】

「皆さんをここへ呼んだのは他でもありません。

 昨夜未明、旅館の一室で殺された新田 団サンを

 殺した犯人が分かったのです」


【容疑者候補達】

「な、なんだって!」


【迂闊刑事】

「そ、それは本当なのか? 調太君」


【女性1】

「ちょっ! ちょっと待って下さい!

 この中に犯人が居るってどういう事ですか?」


【調太】

「あぁ、許可なく喋るのはやめて貰いたい。

 犯人以外、俺の推理を聴くのみに徹しろ」


【男性1】

「なっ、何だと!?」


【調太】

「まあ……推理を褒める、驚く。

 後、耳の穴をかっぽじるくらいは許してやるけどな。ははっ」


【女性2】

「高校生が探偵の真似事? ここは子供の遊び場じゃ――」


SE 銃を突きつける音 カチャとかカチャリ


【迂闊刑事】

「黙らんと射殺するぞ」


【女性2】

「ひぃっ!」


【迂闊刑事】

「明日は娘のピアノ発表会なんじゃ。

 全員、調太君に協力しろ。いいな?」


【調太】

「迂闊刑事、民間人に銃口を向けるなんて迂闊ですよ」


【迂闊刑事】

「すまん、すまんっ! またしてもワシは迂闊な真似を」


【調太】

「では……名探偵の名推理といこうか」


【容疑者候補一同】

「ごくり……」


【調太】

「今回の事件の第一発見者である動機 亜留江さんはいますか?」


【亜留江】

「いますけど……何か?」


【調太】

「ズバリ貴方が犯人だ。異論は受け付けない」


【調太と亜留江以外】

「なっ!? なにぃっ!」


【迂闊刑事】

「は、はは、犯人は被害者の婚約者、亜留江サンじゃと……!」


【亜留江】

「私は殺してません! どうして私が彼を殺さなければ

 ならないんですか? 私と彼は結婚の約束をしていたんですよ?」


【調太】

「殺人事件における第一発見者の犯人率は70%強。

 それが肉親や婚約者であれば80%まで跳ね上がる!

 常識でしょう」


【女性1】

「常識って……現実と仮想をごっちゃにするべきじゃないわ。

 そんな単純な理由で人は殺されないし、人を殺さない」


【調太】

「しかし、人は死ぬから面白い。よく言うでしょ?

 事実は小説より奇なり、とね」


【亜留江】

「私……じゃない。私は彼を殺してなんかいない」


【調太】

「いーや、貴方だ」


【亜留江】

「私じゃない!」


【調太】

「貴方が新田さんを殺したんだ!」


【亜留江】

「違います!

 そこまで言うのなら何か証拠があっての事なんでしょうね」


【迂闊刑事】

「そうじゃそうじゃ。調太君。犯人逮捕には証拠がいるぞ」


【調太】

「ふっ。亜留江さんは既に犯人というフラグを

 踏みまくっている事に気づいていないようだ……

 フラグを踏めば回収が始まる。

 回収が終わった時には、貴方が犯人である可能性は100%だ」


【亜留江】

「何を訳の分からない事を、刑事さん。

 こんな子供の言葉に付き合わせる為に私たちを呼んだんですか?」

【調太】

「貴方は被害者である婚約者さんが部屋で殺されるのを発見し……」

【調太】

「どうしました?」


【亜留江】

「どうしたって……警察を呼んだわ。

 旦那が部屋で死んでいるって……」


【調太】

「それはおかしいですねえ。床に伏せて出血量がハッキリしない

 状態の新田さんを貴方は死んだと断定したんですか?」


【亜留江】

「そ、そうよ! それのどこがおかしいの?」


【調太】

「脈は測りました? 呼吸の音は? 心臓の鼓動は?」


【亜留江】

「脈と心臓が動いているかは確かめました」


【調太】

「それもおかしい。貴方は新田さんを見つける時にこう言っている。 頭の中が真っ白になり、彼を抱きしめ必死に呼びかけたと」


【亜留江】

「愛する人が血だらけで倒れていたのよ。

 気が動転しない方がおかしいじゃない」


【調太】

「気が動転しない方がおかしい……確かにその通りです」


【調太】

「では、気が動転した状態でどうやって脈を図り、

 心音を確認したのですか?」


【女性1】

「確かに変よね……」


【男性1】

「俺もそれは気になった。赤の他人ならいざ知らず倒れているのが

 婚約者なら、死ぬなんて言葉は本能的に避ける筈だ……」


【女性2】

「そうね。希望的観測を込めて、この場合、死んでいるではなく、

 倒れているって言うかな」


【迂闊刑事】

「おおおおっ! さすが調太君。目の付け所が違うわい」


【調太】

「どうなんです? 亜留江さん」


【亜留江】

「うっ……そっ、それは部屋で血を流して倒れていたから

 私は死んでると思ったの。貴方は倒れたではなく、

 死んだと伝えただけで犯人扱いするつもりなんですか?」


【調太】

「まさか。確かに貴方の言うように誰しもが倒れた、

 と答える訳ではないと思います。亜留江さんは例外だった」


【亜留江】

「そ、そうよ。そんな事で犯人と決められちゃ堪らないわ」


【調太】

「しかし、です。やはり貴方が今回の犯人である事は

 揺るがないんですよ。亜留江さん」


【亜留江】

「だから証拠を――!」


【調太】

「確認します。貴方は亡き夫の発見後、警察に電話をし、

 待っている間に夫の元へ寄り抱きしめた」


【調太】

「そのため警察が駆けつけた時、亜留江さんの衣服は夫の血で

 赤く染まっていた。間違いありませんか?」


【亜留江】

「それは何度も警察に話したわ。

 私に婚約者を失った悲しみはあっても一点の後ろめたさもない。

 だからこそ、すぐに証拠品として

 血の付いた衣服を渡したじゃないですか」


【調太】

「そうですねえ。押収した衣服は胸の辺りから

 ヘソの辺りまで夫の血で染まっていた」


【迂闊刑事】

「も、もしかして調太君。彼女は夫を抱きしめたのは自分に

 ついた返り血を誤魔化すために……それで敢えて!」


【調太】

「迂闊刑事にしては珍しく冴えている。その通り、

 彼女は自分の付いた返り血を誤魔化す為に新田さんを抱きしめた。 ですが……」


【亜留江】

「そんなのそっちの勝手な想像じゃない!」


【迂闊刑事】

「だ、だまらっしゃい。亜留江さんは十分、怪しいんじゃ。

 そういう風にとられても不思議じゃないわい。のう? 調太君」


【調太】

「亜留江さん。俺が注目したのは衣服の後ろ、

 つまり背中の箇所に付着した血痕です」


【迂闊刑事】

「な、何と! 背中の血痕じゃと!」


SE 写真ペラッ


【調太】

「これは亜留江さんが提出してくれた服の写真です」


【女性1】

「……あっ! ホントだ! 調太の言う通り、

 背中の部分に点々の血の後があるわ」


【迂闊刑事】

「本当じゃ。細かすぎて気付かんかったわい。

 調太君は実に目ざといのう」


【亜留江】

「そ、それが何だと言うのです。私は夫を抱きしめてたんですよ。

 血の一滴や二滴…背中ついたっておかしくないし……」


【亜留江】

「そうだわ。

 夫が私の血の付いた手で私の背中に触れたって事じゃない」


【調太】

「ありえませんねえ。もし、そうならこんな丸い点線のような

 血の付き方はしません。では、何故このような血痕が?」


【亜留江】

「あの時、必死だった私にそんな事、分かるものですか!」


【調太】

「なるほど、分かりませんか。では俺が変わってお答えしましょう。 こういった特殊な血痕は、とある条件の元でしか

 付着したりしないんですよ」


【女性2】

「とある条件?」


【調太】

「背中についた点状の血痕。これは貴方が夫を鍬の様な

 凶器を思い切り振り上げ、振り下ろした時についたものだ」


【迂闊刑事】

「く、鍬の様なものじゃと!」


【男性1】

「そういえば農作業様の鍬が一つ無くなったと

 旅館の人が話してたのを俺は聞いたぞ」


【調太】

「血の付いた鍬を真後ろへと振りかざす。

 服についた血痕はその際に付いたものでしょう。

 つまりこれは、貴方が婚約者を殺した決定的な証拠なんです!」


【亜留江】

「……っ!」


【調太】

「俺の推理に反論があるなら聴きましょうか? 亜留江さん」


【亜留江】

「うっ……ううっ……!」


【調太】

「この世に解けない謎はない。この世に溶けないアイスもない。

 この事件の犯人は……」


【調太】

「動機 亜留江! お前だー!」


バーン! みたいな効果音


【亜留江】

「ぐすっ……うっ……ぐすっ……」


【調太】

「殺害に至った理由は、夫の浮気か何かでしょう。

 それが、ここへ来て爆発し犯行に及んだ、

 冷め切った夫婦関係の結末、それがこの事件の――」


【亜留江】

「……何でそんな嫌な言い方するんですか?」


しばらく沈黙


【調太】

「……んっ?」


【亜留江】

「何でそんな嫌な言い方ばっかりするんですか?」


【調太】

「嫌なって…俺はただ推理しただけですが……」


【亜留江】

「ここに呼び出した時点で

 私が犯人って分かってたって事ですよね?」


【調太】

「えっ、あっ、はぁ……まあ……」


【亜留江】

「じゃあ、すぐに言えばいいじゃないですか。

 これこれこれが証拠で貴方が犯人ですって!」


【調太】

「いやいや、それには順序ってものが……ありますから」


【亜留江】

「普通は倒れてるって表現するのに、

 死んでるって貴方は言いましたね? とか……」


【亜留江】

「この件(くだり)は本当に必要なんですか?」


【男性1】

「……いらないっちゃいらないか」


【女性1】

「確かに、衣服の背中についた血痕さえ突き詰めれば……」


【女性2】

「無駄な会話……」


【女性1】

「そう……よねえ?

 こっちは普通に旅行を楽しみたかっただけなのに台無しだわ」


【男性1】

「そもそも犯人が亜留江さんって分かってるんなら、

 俺らを呼ぶ必要もないしな」


【迂闊刑事】

「ワシもここに来る必要はなかったと言えるの」


【調太】

「いや、アンタはこなきゃダメだろ。迂闊だな……

 まあ、みなさんを呼んだのは……ほら。犯人が分かった時は、

 探偵は人を全員集合させるじゃないですか?」


【女性2】

「そんな『お馴染みの』みたいに言われてもねえ」


【女性1】

「無関係な人間を呼び出して、すぐに解決出来る事件を

 ぐちゃぐちゃダラダラお送りしてたって事?」


【男性1】

「だとしたら、舐めてるよな? 俺たちの貴重な休日を返せよ」


【調太】

「返せよ……と言われましても、でも、


【亜留江】

「その言い訳をする前にハッキリして下さい。

 死んでる、倒れてるの件は本当に必要だったんですか?」


【調太】

「お約束としては……犯人を追い詰める初期作業……」


【亜留江】

「背中の血痕という決定的な証拠があるのに?

 要りませんよね? そんなの」


【迂闊刑事】

「確かに必要ないのう…」


【調太】

「刑事まで何を言い出すんです。

 俺らは今までこのやり方でやってきたじゃないですか?」


【迂闊刑事】

「じゃが君の推理で事件を解決した後、

 どうも納得できんかったんじゃ……

 前々から言おう言おうと思っとったんじゃが」


【調太】

「今、言うなよ! それにやり方はともかく

 俺の推理は完璧で事実、犯人を追いつめたじゃないか」


【女性1】

「推理が正しければ何やってもいいの?」


【女性2】

「それは違うんじゃない?」


【男性1】

「とりあえず、無関係の人間を無意味に呼び出した事を謝れよ」


【調太】

「謝れって……何で」


【迂闊刑事】

「調太君。謝れ」


【調太】

「何でアンタもそっち側についてんだ。普通、俺を庇う側だろ」


【亜留江】

「後、これも気になってたんですけど年上の人に向かって

 アンタとかお前とかもやめた方がいいですよ。単純に失礼なんで」


【迂闊刑事】

「全くじゃ。調太君には目上の者を敬う心がない。

 それが今回の無礼極まる推理劇を呼び起こしとるんじゃぞ」


【調太】

「いや、でもほら……探偵ってちょっと変わり者が多いでしょ?

 だから俺は――」


【迂闊刑事】

「何と!? 君は失礼である事を承知でやっとったのか!?」


【女性1】

「2、30歳、上の人にやる事じゃないわね」


【男性1】

「とんでもないクソガキだよ、コイツは」


【調太】

「は、はあ? クソは人殺しのコイツだろ?」

 何で人を殺した奴以上に俺が責められなきゃいけないんだよ」


【亜留江】

「だから、それは謝ってるじゃないですかぁ!」


【調太】

「謝ってないだろ。何、謝ったていにしてんだよ

 お前は人殺しで嘘つきな最低女だ! 死ねっ!」


【亜留江】

「うわぁーん! また、あんな酷い事言うー!」


【女性1】

「あぁ、亜留江さん、泣かないで」


【女性2】

「そうよ、私たちがついてるわ」


【調太】

「だから! 何でそっちを庇うんだよ!

 どう考えてもおかしいだろ!」


【女性1】

「亜留江さんは愛憎という、理性ではどうにも出来ない感情の末、

 夫に手を掛けた。事の発端は愛よ」


【亜留江】

「ありがとうございます」


【女性2】

「でも、貴方は違う。ただ偉そうにカッコつけたいって理由で

 無関係の人間を呼び出し、すぐに解決出来る事件を遠回りに

 ダラダラ推理して亜留江さんを追い詰めた」


【亜留江】

「今も追いつめられてますぅ!」


【調太】

「泣くんじゃねよ! 女は泣けば何でも許されると思ってる。

 それがムカつくんだよ」


【迂闊刑事】

「完全にブーメランじゃのぅ、

 君は正しい推理さえすれば何でも許されると思っとるじゃないか」

【調太】

「迂闊の癖に冴えた返しすんな!

 誰のお陰でクビにならずに済むと思ってんだ」


【迂闊刑事】

「なんじゃと!」


【男性1】

「来てやった俺らに謝罪もねえし、お礼もねえしよ。

 お前には心がねえんだよ、心が」


【迂闊刑事】

「目上への気配りも絶望的じゃ。

 警察関係の人間はみんな君を嫌っておるぞ」


【調太】

「今、ここでいう事か?

 俺、めちゃくちゃ警察に貢献してるだろうが!」


【女性1】

「だから、それとこれとは話が別なんですって。まだ分からないの?」

【男性1】

「分からないならお得意の推理で嫌われてる謎を解けよ」


【調太】

「お、俺の推理はそういう事に使うのではなくて

 あくまで犯人逮捕の為に使ってる訳で……

 それが探偵の条件と言うか……ってうるさい!」


【調太以外】

「解~け、解~け」

※調太がうるさいって言うまで言い続ける


【調太】

「生意気で面倒くさくて遠回しに犯人を追い詰めて何が悪い!

 こんなの許容量の範囲でしょ。事件解決したのは俺ですよ。

 それをネチネチネチネチ……しょうもない!」


【調太以外】

「か~え~れ」

※調太がしょうもない!と言うまで


【調太】

「何だよ! みんなして言いたい放題言いやがって!

 お前らみんなつまんねえんだよ! バーカ、バカバカ! 低脳!

 クサレ脳みそ! 何か罪犯しやがったら、この名探偵の

 荒 調太様がすぐにとっ捕まえてブタ箱にブチ込んでやるからな!  覚悟し――」


SE 銃声


【調太】

「ぎゃっ!」


SE 調太、倒れる


【迂闊刑事】

「あっ……うるさくてつい、発砲しちゃったわい」


【女性1】

「ナイス! ヘッドショット!」


【女性2】

「ナイス! ヘッドショット!」


【男性1】

「ナイス! ヘッドショット!」


※大きな拍手が段々小さくフェイドアウト


(現在に戻る)


【調太】

「って訳なんだ。幸いめちゃんこ硬い僕の頭蓋骨が

 迂闊刑事の銃弾を受け止め、一命を取り留めたけどね」


【ミタ】

「ふーん、それがお爺ちゃまが機械の体になった理由かあ」


【調太】

「ああ。代償は大きかったという事だね」


SE ノック


【調太】

「はーい、開いてますよ」


【亜留江】

「お茶が入りましたよ、パパ。ミタちゃん」


【調太】

「わあ。ありがとうママ」


【ミタ】

「サンキュー、マッマ」


【亜留江】

「扉越しで話を聞いてたけど……

 パパ、代償は大きくなかったでしょ?」


【調太】

「え?」


【亜留江】

「だって……ねえ?」


【調太】

「あ、ああ……そうだね。あの事件が切っ掛けで亜留江ママと

 結婚出来たんだ。代償より幸福の方が勝ってるかな」


【ミタ】

「えええ!? パパの話に出て来た犯人ってマッマだったの?」


【亜留江】

「んふふっ、そうよ」


【調太】

「ははは。今まで気づかなかったなんて、

 名探偵の道はまだまだ厳しそうだね」


【ミタ】

「私のマッマが元・殺人犯なんてパンチ効きすぎてるよー」


【調太】

「言ったろ? 事実は小説よりも奇なり、ってね」


【ミタ】

「言った言った! でも凄いねえ! 運命だねえ!」


【調太ナレ】

「僕の言葉に大きく頷く娘。探偵をやめてから色々あったけど……」

【亜留江】

「ミタちゃんも探偵になりたいのよねえ?」


【調太ナレ】

「僕は幸せだ。

 頭に埋まった銀の銃弾のせいで、飛行機には乗れないけど」


【ミタ】

「うん! 私、名探偵になるのっ! それで悪い人捕まえるの!」


【調太ナレ】

「僕は幸せだ」


【亜留江】

「そう。じゃあ、その時の為に練習しとかないとね」


【調太ナレ】

「探偵は神様じゃない。だから、何をやっても、

 何を言っても許される訳ではないのだ」


【ミタ】

「うん! じゃあ、やるから見てて」


【調太ナレ】

「勘違いしてはいけない。

 名探偵に必要なものは過剰な演出ではなく…」


【亜留江】

「はいはい。見てるわよー」


【調太ナレ】

「冴え渡る頭脳と人を思いやる心……それが大事なんだ」


【ミタ】

「本当に、ほんと~うに、違ってたらごめんなさい。

 その……凄く言いづらいんですけど……」


【調太ナレ】

「貴方が犯人ですね? 思いやりがまだ足りない。

 犯人はお前だ! こんなものは論外だ。

 だからきっと正解は……」


【ミタ】

「貴方が犯人という事でお間違いないでしょうか?」


【調太】

「ふっ……」


【調太ナレ】

「完璧な答えだ。僕が犯人なら、はいって言う」


(終わり)

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